食堂に揃った入居者たちは、いつもと違う空気に困惑していた。
復帰した直希に声をかけようと思っていたのだが、隅のテーブルで言い争ってるつぐみと明日香が気になって、それどころではなかったのだ。 直希は膝の上にみぞれとしずくを座らせ、二人に朝食を食べさせている。* * *
「理由を教えてって言ってるのよ。全く、どうして分からないのかしら」
「だからつぐみん、今は言えないって言ってるじゃない。いいじゃん別に。これまでだって、何度も二人を見てもらってるんだし」
「ここは保育所じゃないんです。みんな忙しいし、直希だって昨日まで、熱出して寝込んでたんだから」
「えええええっ? ダーリン、本当なの?」
「ははっ……お恥ずかしい限りで」
「なんであたしを呼んでくれなかったのよー。付きっきりで看病してあげたのにー」
「その心配は無用です。ここには優秀なスタッフが揃ってますし、何より私がいるんですから」
「ふーん。つぐみんってば、そんなところでポイント稼いでたんだー」
「なっ……私は看護師、と言うか医者なんです。公私混同なんてする訳ないでしょ」
「公私混同?」
「あ、いえ……今のは違うわ。直希も何笑ってるのよ。私はただ、医療に携わる者として、直希についてただけなんだから」
「パパー、ママとつぐみん、また喧嘩してるー」
「してるー」「ははっ、そうだね。ほらほらしずくちゃん、ほっぺにケチャップついてるよ」
「ありがとーパパー」
「パパー、みぞれもー」「はいはい」
「ちょっと直希、あなたも何か言ってやりなさいよ。なんで他人事みたいに涼しい顔してるのよ」
「別にいいじゃないか。二人の面倒ぐらい、何なら俺が見るから」
「そういうことを言ってるんじゃないの。そりゃね、知らない間柄でもないし、困った時はお互い様なんだから、協力するのはいいんだけ